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コロナ後もオープンイノベーションが都市の成長を牽引する

コロナ禍を機に議論され始めたオフィス不要論がオフィスエリアの存在意義を根底から揺らし始めている。都市の成長を支えてきたオフィスエリアは今後どのように変化していくのか。結論としてはオープンイノベーションを育むエリア、すなわち「イノベーション?ホットスポット」がこれまで以上に重要視されるようになるだろう。

2020年 12月 10日

コロナ下でオフィス?都市機能が分散

新型コロナ感染拡大によって半ば強制的に実施することになった在宅勤務だが、思いのほか機能することが判明し、一部の企業はオフィスを解約?縮小するなど、リモートワークを主体とした働き方に切り替え始めている。オープンイノベーションを育む場として、国際都市?東京の成長を支えてきたオフィスエリアの存在意義はどのように変化していくのだろうか。

JLL日本 リサーチ事業部 アナリスト 中村 麻子は「『3密(密閉?密接?密集)』を防ぐべく、これまで都心部に一極集中させていたオフィス機能を分散する機運が高まっている。そうした中、都心の中心業務地区にはコアオフィス、職住近接が可能な郊外にサテライトオフィス、そして在宅勤務を組み合わせ、それらを有機的に連携させる分散型オフィスが働き方の主流になる」と予想する。

その中で、コアオフィスに求められる役割は何か。JLL日本が実施したアンケート調査で「今後のオフィスの役割」について質問したところ、「Face to Faceのコミュニケーションの場」や「Face to Faceによるイノベーション?コラボレーション創発」といった回答が多数を占めた。つまり、コアオフィスに求められる機能は「コミュニケーション活性化によるイノベーション創発」に帰結する。オフィス立地としてみれば、単純に企業が集積するエリアではなく、オープンイノベーションを育む場所である「イノベーション?ホットスポット」の存在価値がこれまで以上に高まることが考えられる。

オープンイノベーションを育むオフィスエリア

外部の知識や情報を積極的に取り入れ、新たな技術革新(イノベーション創発)を目指すオープンイノベーションが注目を集めている。多くの企業が集積する主要オフィスエリアには、様々な企業や人材が交流を深めるシェアオフィスやコミュニティスペースが用意され、単純にオフィスで仕事をするだけではなく、より広域かつ多角的にオープンイノベーションを育む場所としての機能が求められるようになっている。

イノベーション?ホットスポットに企業は惹きつけられる

しかし、オフィスの分散化が進めば、これまで企業が集積していたオフィスエリアの存在価値は低下すると思われる。しかし、中村は「結論からいえば、都市の成長を牽引するエンジンとしてより重要な存在になる」との見解だ。

これまで都心部に一極集中していた都市機能を分散させ、それらが有機的に連携させる、広域圏で経済発展を促すハイパーコネクト都市圏がコロナ後に台頭すると予測される。都心の中心業務地域にはイノベーション?ホットスポットを内包し、イノベーション創発や優秀な人材を輩出。この中心業務地域を取り巻くように、より職住近接の働きやすいサテライト都市が連動する。

ハイパーコネクト都市圏はイノベーション主体の活動が活性化することで接続性(Accessibility)、アメニティ(Amenity)、割安感(Affordability)、アンカー企業(Anchor institutions)の4つの「A」を備えた新たなイノベーション?ホットスポットへとますます集中させる。中村は「イノベーション経済やナレッジ経済業界の企業群は、生産性向上やコラボレーションの奨励、人材の採用と維持のためにこうしたロケーションに魅了され、集まり続けるであろう」と予測している。

JLL日本では、国際都市?東京における「イノベーション?ホットスポット」として、テック企業の集積地である渋谷ITベンチャーが集積する五反田バレー、芸術?文化的背景を有する日本橋イースト、そして東京大学を起点にAI関連のスタートアップが続々と誕生している本郷バレーの4エリアを定義した。この中でも、アンカー機関となる東京大学を有する本郷は、まさに4つの「A」を併せ待つイノベーション?ホットスポットといえるだろう。

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AIスタートアップの集積地?本郷バレー

本郷は、「文教の地」として知られている文京区にあり、伝統のある大学や多くの教育施設が所在している。都心5区である千代田区にも近く、南はお茶の水、東は上野?外神田に隣接し、エリアの中央にある地下鉄丸ノ内線と都営大江戸線の本郷三丁目駅の周辺や主要幹線道路沿いには、中小規模のオフィスビルが多く立地している

大学の付属病院も所在することから医療機器関連テナントのニーズも多いが、スタートアップ企業を対象としたインキュベーション施設やスタートアップ向けのコワーキングスペースも少なくない。特にAI関連のスタートアップ企業が集積していることから「本郷バレー」と称されるほどである。

オープンイノベーションを推進する東京大学の存在感

本郷をイノベーション?ホットスポットたらしめる最大の理由は東京大学の存在に他ならない。日本におけるAI研究の第一人者である東京大学?松尾豊教授の研究室がAI人材を多数輩出。AIスタートアップの起業を促すだけでなく、国内外のテック企業との産学連携を推進している。

産学連携の代表例として、ソフトバンクグループとヤフー、東京大学は世界最高レベルのAI研究機関として「Beyond AI 研究推進機構」を設立した事例が挙げられる。2020年7月30日から協働研究を本格的に開始したことで話題になった。

三菱地所は、東京大学と共同で、卒業生?研究者?学生の起業を支援するプログラム「東京大学FoundX」向けの施設を本郷に開設した。ここでは起業直前?直後のチームに対して個室やコワーキングスペース、会議室といったスタートアップ初期に必要なスペースを無償で提供している。物理的な場所の提供のみならず、起業に必要な知識、支援プログラム、起業家教育プログラムといったソフト面の教育サービスの提供も行っている。

松尾研究室のメンバーが中心となって設立されたNABLASは松尾研究室が開発したAI人材教育コンテンツを学外向けに提供しており、東京海上ホールディングスとAI人材育成で提携しているが、2020年3月には東京大学近くにAI人材の教育?交流拠点となる「iLect Studio」を開設した。

中村は「企業としては、AI人材やスタートアップとのオープンイノベーションを通じて新技術開発に関するノウハウの蓄積という大きなメリットがあり、自前主義から脱却した技術革新が期待できる。蓄積された知見を通して、より付加価値の高いサービス提供が可能となり、新規成長領域への進出や新しいビジネスモデルの推進という利点も期待される」と指摘する。

東京大学を起点に、スタートアップ企業とインキュベーション施設が集積することでオープンイノベーションを育む環境が生まれつつある。ひいては優秀な人材を吸引し、地域の成長を後押しする。本郷で見られる産学官民が一体となったオープンイノベーション醸成への取り組みはwithコロナ?afterコロナ時代においても都市の成長エンジンとして、ますます重要性を高めていくだろう。

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